1999/10/15

気が付いてみると、独立してあっという間の1年が過ぎてしまった。在宅の仕事だけでなんとかやってこれたので、創業初年にしては、そこそこ順調な1年間だったと言えそうである。とりあえず1年間やってみての、独立SOHOの感想などを述べてみたい。

メリットは時間

在宅勤務のメリットは、まず当然通勤時間がなくなることだ。往復2時間の通勤時間がなくなれば、1週間(5日間)で丸1日分(8時間)の節約になる。これだけで対応できる仕事量が全然違ってくる。さらに1日の時間を有効に使えるのも大きい。会社員は暇な時間が一番辛いが(辛くない人は独立する必要はないだろう^^;)、在宅なら空いた時間を有効に使える。仕事がなければ、遊ぼうが勉強しようが自由なのだ。

逆にデメリットは、生活リズムにメリハリがなくなってしまうことだ。会社に勤めていれば、会社と家庭は別の空間なので、無意識のうちに明確に切り分けられている。しかし在宅勤務だと、家の外へ出ない限り実際上仕事から完全に離れることができなくなる。この感覚は実際に在宅勤務をやってみないとわからないかもしれない。

結局、在宅と通勤とでは、時間の量が違ってくる。在宅の場合は、通勤より多くの時間が使えるが、反面、24時間365日仕事から離れられなくても平気。というくらい仕事が好きか、あるいは営業時間外は絶対にメールを開けず、電話も切ってしまうくらいの切り分けができないと、かえってストレスがたまるだろう。

儲かるの?

年収は今のところ会社員のころとそれほど変わらない。確かに作業に対してもらうお金は、会社員のときの何倍もの額なのだが、作業前の打ち合わせや、終わったあとのバグサポートでは、普通はお金はもらえない(というか含まれているのだが)。だから1年にならしてみると、忙しさのわりにはそれほど儲かってはいない。もちろん売上は自分次第なので、もっと仕事をとればもっと儲かるはずなのだが、1人では、時間のやりくりが難しくて限界があるかもしれない。これが今のところの感想である。より効率良く仕事を入れるためには、できれば仲間を見つけて連携したいところだ。

がんばった分だけ儲かるのは自営業の魅力だが、前述の通り、お金の発生しない作業というのもかなりある。お金がもらえなくても、ちゃんと気合入れて働けるようでなければだめだろう。仕事をもらってから動くようでは自営業はできない。指示する上司がいないのだから、お金に関係なく何でも率先してやらなければ話にならない。サラリーマンより自営のほうがお金に対する執着心が出るのが普通だ。自分の一声で取引金額が決まってしまうのだからこれは当然だ。しかし、特に1人だと、お客さんの自分への評価が今後の仕事にすぐに跳ね返ってくるので、少しでも気を抜いた姿勢を見せることは致命的になりかねない。仕事に対する姿勢は非常に重要になる。

自由と責任

自営業最大のデメリットは、自由には必ず責任が伴うということだ。とは言ってもソフトウェアの場合、工数計算なんて、ほとんどどんぶり勘定の世界だし、ちゃんと動くかどうかなんて、やってみなきゃわからない。「責任を持って」といっても、そんなのは根拠がない無責任な発言なのだ。「何かあったらそのとき考えよう、なるようになるさ」くらい開き直った考えで行けるようでなければだめだと思う。いちいちまじめに考えていたらプレッシャーに負けてしまう。ただ、自分でやるということは、自分に責任が伴うことだけは良く知っておくべきだろう。ソフトを開発するということ自体がハイリスクなのだ。

どんな人が独立SOHOに向く?

仕事が好きで、会社で仕事をしていて時間がもったいなく感じる。そんな人なら在宅に向いているかもしれない。でもほとんどの人は、仕事と家庭生活を切り分けたいだろうから、あまりお勧めできない。正直、仕事が好きだし在宅のほうがはかどると、絶対の自信があった私でも、時間が経つにつれ、思っていたよりずっと辛くなってきている。

と言っても、私自身は独立して良かったと思っている。常に目標を持っていれば、仕事に上司は不要だ。しかし、事業内容にもよるが、指示されるのが嫌いだからと独立しても、意味がないかもしれない。上司がいなくても顧客から指示されるのだから。

最後に。私のように人脈ゼロからのスタートで、いきなり在宅の仕事が取れるのはまれかもしれない。どのSOHO情報サイトへ行っても大抵「いきなり在宅で仕事を取ろうとするのは無謀」などと書いてある。やはり最初は常駐で。という覚悟と姿勢は必要だろう。