2003/2/11

コックピット(リアル)2002/12/9。ハワイで飛行機の体験操縦をしてきました。米国では教官の指導下であれば無免許運転が可能なのです。航空法上、日本ではできない体験です。同乗者に写真とビデオ撮影をしてもらいました。後日フライトシミュレータ(MicrosoftのFS2002)で同じ経路を飛んでみました。シミュレータの画像も交えながらの体験記です。

飛行経路
飛行経路

ヒコー記

今回お世話になったのは日本人経営のフライトスクールWashin Air。ホノルル国際空港の敷地内にあります。教官は福島氏。

操縦する機体は4人乗りの単発機。パイパー社のアーチャーII(N8259T)です。自家用操縦士の訓練で一般的に使われているセスナ機などと比べて、一回り大きく馬力のある機体だそうです。それでも室内は軽自動車より狭いくらいです。

フライト前に簡単な操縦の説明がありますが、10分くらいのもので非常に簡単です。飛行コースと巡航高度、計器については、高度計、姿勢指示器、方向指示器、対気速度計の4つだけです。ローテート速度、上昇速度、進入速度、などを教わります。ラダー、フラップについても簡単な説明がありました。「これだけでいいのかよ」というほど少ない内容ながら、短い時間であっという間に説明されるので、ほんとに一瞬です。予備知識のまったく無い人には理解できないかもしれませんが、まあ問題ないのでしょう。

計器(シム)計器(リアル)
計器
計器に関してはかなり見慣れているので実物を見ても混乱はない。

Taxi to RWY04R (離陸準備)

コックピットへ乗り込み、ヘッドセットを装着すると「では、ここを回してエンジンをかけて下さい」。いきなりエンジン始動から操作させてもらえるとは感動。まあここは自動車と同じだけど。教官が管制と交信「Honolulu ground, Piper november eight two five niner tango at parking. Request taxi for takeoff with alpha.」「Piper november eight two five niner tango, Taxi to runway zero four right.」(←適当、ほんとはたぶんもっと複雑)4R滑走路へのタキシングを開始します。

搭乗(シム)搭乗(リアル)
搭乗
Flight1のArcherIIは格納庫まで開くし、搭乗者数に応じてモデルと重量が変化するなど芸が細かい。シミュレータでも3名搭乗とした。

タキシングは、操縦桿ではなく、ラダーペダルを使った足の操作で行います。なんだか手持ち無沙汰な感じです。最初はフラフラしますが、コツを掴めばなんとかまっすぐ走れるようになってきます。車輪が駆動するわけではなく、タキシングでもプロペラの推進力で前進します。スロットル操作は教官がやってくれるので、減速などの感覚が分かりにくいのですが、思っていたよりペダルは重く、曲がりにくい感じがしました。

Taxi to runway(シム)Taxi to runway(リアル)
Taxi to runway
LAGOホノルル国際空港シーナリは細かい建物まで再現されていて、ターミナルはもちろん、ジェネアビ駐機場周辺もリアル。

Cleared for takeoff 〜 Climbing to FL150 (ワイキキ上空)

タキシング&テイクオフ経路
タキシング&テイクオフ経路

Piper november eight two five niner tango, Cleared for takeoff runway zero four left.」滑走路手前ですぐに離陸許可が出たようで、ホールドショートせずに滑走路へ進入し、センターで停止します。「では、ゆっくりフロスロットルにしてください」フルスロットルにするとぐんぐん速度が上がり、60ノットでゆっくり操縦桿を引くと、あっという間に浮かび上がりました。離陸時、フラップはアップのままです。

離陸直後(シム)離陸直後(リアル)
離陸直後
4R滑走路を離陸し、交差する26R滑走路の上あたりで、右を見るとホノルル市街が見える。この通りシミュレータの映像はかなり現実に近い。

速度80ノットで巡航高度の1,500フィートへ向けて上昇します。しかしいきなり、ヘディングを安定させることもままならない激しい揺れ。旅客機ではなかなか体験できない風の力を感じます。ワイキキ上空を通り、ダイヤモンドヘッドへ。「上空から宿泊先のホテル見えるかなあ」なんて言っていたのですが、全然それどころではなく、ようやく気流が安定してくるハナウマ湾上空あたりまで、全く外を見る余裕はありませんでした。ダイヤモンドヘッドを通過し、オアフ島の東側へ出ると徐々に揺れがおさまってきました。

ホノルル市街(シム)ホノルル市街(リアル)
ホノルル市街
離陸して高度を上げながら右へ向かうとほどなく市街上空。遠くにダイヤモンドヘッドが見える。しかしフォースフィードバック対応のジョイスティックといえど、現実の激しい揺れはシミュレータでは体感できない。

離陸の動画です。激しく揺れてますが、手ぶれではなく、ほんとに揺れたんです。(1分44秒)

RealMPEG(17.4MB)
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遊覧飛行 (ハナウマ湾〜ノースショア)

ココヘッド上空を通過すると、ハワイ人気スポット、ハナウマ湾が見えてきます。僕は行ったことがないのですが、上空からの景色は美しいものでした。さらに進むとジュラシックパークなどのロケ地になったという密林地帯が見えます。ワイキキの雰囲気からは想像できない大自然が広がります。

サークリング開始(シム)サークリング開始(リアル)
ココヘッド
ホノルルマラソンではこのあたりまで走ってくるわけだ。すぐ向こう側はハナウマ湾。
ハナウマ湾(シム)ハナウマ湾(リアル)
ハナウマ湾
上空から見ても美しいハナウマ湾。残念ながらシミュレータでは普通の湾。遠くには裏から見たダイヤモンドヘッド。

ほどなくカネオヘ海兵隊航空基地が見えてきます。この上空は通れないということで左側を通過します。ふと見ると、大型の多発機が着陸のためクロスウィンドレグを飛んでいます。大きな飛行機が眼下を飛んでいるというのは結構感動します。

カネオヘ海兵隊航空基地(シム)
カネオヘ海兵隊航空基地
ここでは初めて飛んでいる飛行機を上から見た。残念ながら実写なし。

さらに飛んで、ポリネシア文化センターを過ぎると、もうすぐオアフ島北端です。オアフ島最北端のホテル、タートルベイ・リゾートが見えます。このあたりでは、この時期、上空からクジラが見えることもあるそうです。

Climb and maintain FL250 (ノースショア〜パールハーバー)

ノースショアに差し掛かかったところで、教官の「ではフルスロットルにしてください」の指示があり、高度2,500フィートまで上昇します。ここで燃料タンクの切り替えをしました。ノースショアの先にはデリンガム飛行場がかすかに見えます。4年前にここでスカイダイビングをした思い出がよみがえってきます。このあたりで左旋廻し、ホノルル国際空港へ向かいます。

ほどなく眼下には広大なパイナップル畑が広がります。残念ながらシミュレータではただの畑です。地上から見ると無限に広がるパイナップル畑ですが、上空から見ると、その大きさが良く分かります。そして前方にホイーラー陸軍飛行場が見えてきます。ここは上空を通過することができるそうです。多数のヘリが駐機しているのが見えました。

パイナップル畑(シム)
パイナップル畑
シミュレータでは普通の畑にしか見えないが。
ホイーラー陸軍飛行場(シム)
ホイーラー陸軍飛行場
ここは真上を通過。多数のヘリが駐機していた。遠くに見えてきたのはパールハーバー。

Clear to land, RWY04L

このあたりまで来ると、パールハーバーがはっきり見えてきます。この航路は、太平洋戦争の真珠湾奇襲攻撃の際の航路のひとつなのだそうです。複雑な気分です。「Honolulu tower, Piper november eight two five niner tango. Request Landing.」「Clear to land, Runway zero four left.」アリゾナ記念館が見えてくると、徐々に着陸準備に入ってきます。このあたりは国際空港の場周というだけあって、多くの航空機が飛んでいるのが視認できます。正面には小型機、足元には大きなヘリコプターが飛んでいました。

ランディング&タキシング経路
ランディング&タキシング経路

徐々に高度を下げつつ、「では、あそこに見える左右のターミナルの中央あたりを通ってください」えー、そんなところ飛んじゃっていいんですか。という感じで通過。海上に浮かぶ8R/28L滑走路の上空を通ってはいけないということで、サークリングアプローチで4L滑走路へ進入します。そういう進入をするとは思っていなかったので、かなりの急旋廻となってしまいましたが、なかなかの迫力です。ファイナルアプローチに入ったら、フラップを下げてミニマムに進入します。いよいよ着陸。フレアのタイミングが早かったのか、なかなかタッチダウンしません。スロットル操作は教官任せなので、スロットルで降下率を調整する感覚が分かりにくいというのもありました。結局思ったよりかなり先にタッチダウンしてしまった気がします。隣の4R滑走路で待機中の飛行機がいたので、教官が大急ぎで誘導路に出してくれました。それから格納庫までタキシングし、エンジンを切って、1時間のフライトが終了です。

サークリング開始(シム)サークリング開始(リアル)
サークリング開始
8R/28Lを通らないように4Lに向かってサークリングアプローチ。このラグーンランウェイはフォトシーナリとなっており、リアリティ抜群。
ファイナルアプローチ(シム)ファイナルアプローチ(リアル)
ファイナルアプローチ
緊張のファイナルアプローチへ入る。見ての通りかなり雰囲気が出ている。遠くに見える山脈の形もまったく同じだ。
ミニマム(シム)ミニマム(リアル)
ミニマム
そして着陸。お疲れ様でした。

着陸の動画です。ヘタクソです。(3分24秒)

RealMPEG(34.0MB)
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RealRealVideoストリーミング(450Kbps)
ブロードバンド向け

で、感想とか

終わった後にログと認定証がもらえます。今回のフライトは正規の訓練飛行となります。自家用操縦士の免許を取得するには40時間の飛行が必要ですので、あと39時間飛んで試験に受かれば免許が取れることになります。

認定証 ログ

実機を操縦して最初の感じは「フライトシミュレータとはだいぶフィーリングが違う」というものでした。ところが、実機を操縦した後にあらためてシミュレータで飛んでみると「やっぱり結構リアルだ」と感じてしまいました。実機の操縦経験があると、シミュレータのイメージが変わる感じがします。フライトシミュレータ好きなら、実機の操縦経験は非常にお勧めです。

今回導入のアドオン

MSFS2002は地球まるごとのマップと世界中の空港データが含まれていますが、さすがに詳細度は地域によりけりです。オアフ島はその中でも、比較的細かく描かれている地域であり、標準の状態でも美しい景色を楽しむことができます。しかし、以下のような追加ソフトを導入すれば、さらにリアルになります。これから体験操縦をしてみようという方は、一度シミュレータで同経路を飛んでみると一層楽しめますよ。

オアフ島の30mテレインメッシュ (無償)
これを導入すれば地形の起伏がよりリアルになります。ダイヤモンドヘッドのクレーターもはっきり見えます。
Shige氏のハワイシーナリ (無償)
ワイキキ周辺に、現実にあるホテルなどの有名なビルが立ち並びます。
Greatest Airplanes Archer! (有償/$24.95)
Piper社のArcher IIをリアルに再現しています。有償製品だけあって、細部まで見事に作りこまれています。小型機の練習用として常用できる機体です。
LAGOホノルル国際空港シーナリ (有償/20ユーロ)
とても詳細に作りこまれてた空港をハワイアン航空の機体が行き交い、雰囲気抜群です。細かいわりに動作も軽く、すばらしい完成度のシーナリです。
LAGOホノルル国際空港用ファシリティデータ (無償)
このデータを利用すると、小型機が現実と同じように4L/22R滑走路に誘導されるようになります。
ActiveSky (無償/シェアウエア版ActiveSky wxRE $14.95)
現在の実際の気象データをリアルタイムに反映します。