2003/1/30

TrackIR先日飛行機の体験操縦をしてきた。あらためて「シミュレータって良くできてるな」と感じた一方で、何か大きな違いを感じた。1つは機体の揺れとかGといった「体感」。もうひとつは「視界」である。

前者については、ある程度仕方ない。将来は揺れる椅子くらい出てくるかもしれないが、それでもGや、気圧変化を体感することはできないだろう。今はフォースフィードバックくらいで我慢するしかない。

とりあえずやはり視界をなんとかしたい。最近はソフトウェアのほうでも色々頑張っていて、IL-2のように視線をマウスでグリグリできるやつなら自由に見たい方向を見ることができる。しかし、ジョイスティックからマウスに持ち替えなければいけない。左手でマウスを操作すればいいのだが、それも辛い。それにコンバットモノではガラス張りのコックピットで上を見てたりすると、自分が向いている方向が分からなくなる。それからほとんどのコンバットシムでは敵機を自動で追ってくれるパドロック視点ってのもあるが、あれは意思に反して視線が動くのでリアルじゃない。

やはりハードウェアで解決するしかないか。ディスプレイを3つくらい使う方法もあるが、究極はHMD(ヘッドマウントディスプレイ)+ヘッドトラッキングだ。実際こういう製品が発売されていて、これさえあれば360度見渡し放題の究極のバーチャル空間が出来上がる。しかし値段は30万円くらいするらしく。安くなったとは言え、遊びでおいそれと買える値段ではない。

TrackIRってどうよ

ということで、とりあえずHMDが現実的な値段まで落ちてくるまでのつなぎとして、なんとかならんかということで見つけたのが、これ。TrackIRである(関連記事1関連記事2)。おでこにシールを貼って、それを赤外線センサーで読み取ることでヘッドトラッキングして、マウスの代わりにするのだそうだ。あからさまに、いかがわしいキワモノっぽい。ところが一部掲示板なんかで、比較的良好だという話を目にして、急に欲しくなった。

ぷらっとホームが国内の販売代理店ということなのだが、現在は扱っていないようだ。どうやら米国から直接購入するしかないらしい。幸い海外発送もokだったので買うことにした。値段は$129.00。ポインティングデバイスだと思うと高いが、ヘッドトラッキングセンサーだと思えば激安である。でも送料が高くて$54.14。その代わり3日で届いた。

パッケージこれを売ってるNatural Point社では、SmartNavと、TrackIR GXという2製品があって、基本的なモノは同じ?だと思うが、前者はポインティングデバイス用。後者はゲーム用ということになっているようだ。今回購入したTrackIR GXは、パッケージからして戦闘機のコックピットが写っており、まさにこのため。という感じである。パッケージの裏には、IL-2、MSFS2002、Ghost Recon、OFPの映像が印刷されている。

セットアップ

パッケージ内容パッケージにはセンサー部分と、例のおでこに貼るシールが20枚。それにソフトウェアとUSB延長ケーブルが入っている。あちこちに「デバイスを接続する前に、先にソフトウェアをインストールしろ」と書いてあるので、それにしたがってまずはCDからNaturalPointソフトウェアをインストールする。次にデバイスを接続すればデバイスドライバがインストールされ、完了である。とくに難しいところはないが、私の環境では接続するポートによって、ドライバがうまくインストールされなかった。

めがね例のシールはおでこに貼ってもいいが、なんかバカっぽいので、メガネのフレームなんかに貼っても良いだろう。私の場合は、使っていないサングラスのレンズを外して、フレームに貼った。

センサーをモニターの上にでも設置して、NaturalPointソフトウェアを起動すればあとはマウス代わりに使える。NaturalPointソフトウェアでは動作ON/OFFキーの割り当てや、マウスクリックの代わりをさせるキーの割り当て、あとは特定のキーを押している間だけトラッキングさせるようにとか、設定できる。

基本的にはマウス代わりなので、マウスでぐりぐり視線変更できるフライトシミュレータや、FPS(一人称視点シューティングゲーム)などでは、何も考えずに、すぐに使える。

とりあえず使ってみた感じ

設置使う前は「横を向いても画面は正面だから、流し目になってしまい違和感がないか」と思ったが、それは意外と平気で、すぐに慣れてしまう。というか、そもそも横を向いた時に反応する範囲が意外と狭いので、実際には「横を向く」というよりは頭前に向けたまま左右に動かすという感じのほうが具合が良い。

最初は敏感すぎてあまりにも視線が目まぐるしく動いてしまい、かなり厳しい感じがする。それにすぐにセンターが狂ってしまい、なかなか正面を向けない。しかし、これは初心者がマウスをうまく使えないのと同じようなもので、しばらく使っていれば慣れてしまう。私の場合は移動量は小さめ設定したほうが感じが良かった。これだと首を動かした場合の移動量は小さいのだが(というかリアル程度)、大きく動かしたければ軽く体全体で動けば良い。移動量の設定が小さいとセンターも狂いにくい。

とにかく、多少の慣れが必要なのは確かである。しかし慣れてしまえば違和感は取れてきて、いつの間にかバーチャルリアリティ気分になれる。見たい時に、自然に見たい方向が見えると言うのは素晴らしい。この値段でこの環境が得られるのだから、かなり良い買い物だったと思う。

ただ、今までほぼ固定だった画面が、激しく動くことになるので、フレームレートが低いと厳しい。画質を今までより一段階落とす必要が出てくるかもしれない。そういう意味で、少々マシンスペックを要求するデバイスだと言えるかもしれない。

Microsoft Flight Simulator 2002

MSFS2002MSFS2002は、マウスでぐりぐりできないので、NaturalPointソフトウェアのほうにMSFS2002専用の機能が搭載されている。これを選べばokである。MSFS2002はTrackIRが正式に対応というかわざわざ対応させただけあって、もう非常にバッチリ。バーチャルコックピットにすれば、一気に視界が広がって別のゲームのように楽しめる。マウスは視線変更とは独立して動けるので、いちいちON/OFFを切り替える必要もない。

バーチャルコックピットの標準の状態では、妙に計器に近すぎる。そこでフルキーの「-」を押して拡大率を変更する。画面の歪みが気になるようなら、拡大率は変えずにCtrl+Enterで視点を引いたほうが良いかもしれない。

パネル操作を行うのに2Dコックピットにしなければいけないのが難点だが、WilcoのAirport 2002というアドオンでは、クリッカブルバーチャルコックピットの機体が収録されている。試していないが、これなら完璧かもしれない。

IL-2 シュトルモヴィク

IL-2IL-2は元々マウスでぐりぐりできるばかりか、バーチャルコックピットで完結しているので、ベストマッチである。もうパドロックは必要ない。ターゲットを完全に目で追えるようになるし、下を見れば計器も確認できる。

Falcon 4.0

非常に残念ながら、私の環境では動作させることができなかった。もともとFalcon 4.0ではマウスでぐりぐりできないので、TrackIRには向いていないのだが、TrackIRではキー入力にマップすることができるので、使えないことはなさそうな気はするのだが、NaturalPointソフトウェアを立ち上げた状態でFalcon 4.0を動かすと、フレームレートが極端に低下してしまい、ゲームにならなかった。

FPSはどうでしょう

私の場合、FPS(一人称視点シューティング)は、右手マウス、左手キーボードのスタイルで慣れ切っているので特に使いたいとは思わない。しかし、一応ちょっと試してみた感じでは、結構良かった。非常に直感的に視線移動ができる。しかし実際には、FPSでは「視線を変える」ではなく「体の向きを変える」動作なので、例えばすばやく振り向いたりするのが辛いかも。マウスに慣れている人が移行するには慣れがいりそうだ。

他に向いているゲームは?

他にマッチしそうなものとしては、ドライブゲームなんかいいのではないかと思う。残念ながら私はマウスで視線をグリグリできるゲームを持っていないので試すことはできなかった。というかそんなゲームがあるのかどうかは知らない。でも、あれば是非試してみたい。